不妊治療が保険適用になって2年が経ちました。
2年前は数多くのメディアに取り上げられ、
ようやく国民皆保険制度の仲間入りをし、
社会にも不妊や不妊治療について
認知が上がったと思います。
また、不妊治療をしながら仕事をする人が増えていて、
企業でもどのような支援制度が必要なのか
試行錯誤の状態が続いています。
当事者の視点では、いざ不妊治療を始めてみると、
予想しなかった困り事などが出てきます。
当事者になったからこそ自分ごととして捉えることで、
新しい困りごとに気がついたりします。
今回は、企業として使える制度と、
不妊症や不育症の当事者が困った時に使える
支援について、それぞれの視点からご紹介しましょう。
不妊治療中に活用できる制度など
不妊治療中に活用できる制度には、
企業が使える制度と個人が使える制度があります。
企業が使える制度
https://www.mhlw.go.jp/content/001125954.pdf
「両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)」
*どんな企業が、どんな内容で使える?
【対象】
不妊治療と仕事の両立に関する職場環境の整備に取り組みたいけれど、制度を設計するのにもコストがかかるので躊躇している中小企業
【内容】
不妊治療のための休暇制度、所定外労働制限、時差出勤制度、短時間勤務制度、フレックスタイム制度、テレワークのうちのいずれかまたは複数の制度を導入した企業は、助成金を受け取ることができます。
この制度、実はまだまだ知られていないのが現状です。
対象企業の人事部門、総務部門の方は、
ぜひご検討ください!
※東京都チャイルドプランサポート事業
都内で事業を営んでいる企業であることが前提となりますが、両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)と同様に、「不妊治療」及び「不育症治療」の休暇制度及び休業制度等の整備を行なった企業に40万円、 「不育症治療」の休暇制度等の整備を行なった企業に10万円と、それぞれ奨励金が受け取れます。
本事業は事前エントリー制で、奨励金の対象事業者要件をすべて満たす必要がありますので、詳細は下記をご参照ください。
なお、次回のエントリー募集は令和6年8月20日(火)~8月28日(水)で70社を募集予定です。
https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/josei/katsuyaku/childplan/
「くるみんプラス制度」
*どんな企業が、どんな内容で使えるの?
【対象】
従業員の働きやすい環境整備・企業風土の助成をさらに推進したいと思っている企業
【内容】
不妊治療と仕事の両立に取り組む企業を認定するものです。
次世代育成支援対策推進法に基づき、「くるみん」などの認定を受けた企業が、不妊治療と仕事の両立にも積極的に取り組み、一定の基準を満たした場合に、プラス認定を追加で得られます。
「くるみん」を取得した企業が、
個人の事情に合わせた働きやすさ、健康経営を目的に
「プラス」認定を取得するために、
具体的に動き出しています。
今注目の認定制度です。
当事者個人が使える制度
不妊治療連絡カード
不妊の当事者の中には、子宮筋腫などの
疾病を持っている人もいますが、
当事者の半数が明らかな要因がわからない(原因不明)
けれど、不妊治療を受けているというデータがあります。
実際、筆者も疾病名がつくような明らかな要因がなく、
6年間の不妊治療を経験しました。
疾病が見当たらないとなると、
医療機関からの診断書は出ません。
そんな時、ぜひ知っておいていただきたいのが
「不妊治療連絡カード」です。
職場で休暇制度や両立支援制度を
利用する際だけではなく、
職場の上司などに伝えにくい場合は、
このカードを使うのも一つの手段です。
連絡カードをきっかけに
職場に伝えてみるのも良いですね。
この連絡カードは診断書と同様で、
医療機関にて記載してもらい、発行費用も発生します。
不妊治療連絡カードの存在を、医療機関の方が
必ず知っているという状況ではない場合もあります。
ぜひ、医療機関に問い合わせて
上手に活用してみてはいかがでしょうか。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/30b.pdf
こども家庭庁による「結婚・子育て支援信託」
*どんな制度?
不妊治療を行なっているカップルのご両親や祖父母の資産を、結婚や出産・子育てを支援するために贈与税非課税で利用できる制度です。
お子さんやお孫さんが、不妊治療を行なう場合に、その費用として利用できます。
また、自治体の助成金などを使いながら、結婚・子育て支援信託も同時に利用することが可能です。
*どんな人が使えるの?
・不妊治療をしている人で、一般不妊治療や高度生殖補助医療を行なっている子ども、孫
・不妊治療の有無に関わらず、妊娠した人や出産を予定している子ども、孫
※子ども、孫ともに、男女に関係なく対象となります。
不妊治療が保険適用になったとはいえ、
不妊治療が長引けば費用もかかります。
しかし、不妊治療を経ての
妊娠や出産、育児にも費用がかかります。
お子さんやお孫さんの長い人生で
支えになる、頼りになる制度となりますね。
利用には条件もありますが、条件に合致した方は、
ぜひお子さんに、お孫さんに、
利用してみてはいかがでしょうか。
詳細はWebサイトをご覧ください。
https://www.cfa.go.jp/policies/shoushika/zouyozei/
こども家庭庁HP
結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置|こども家庭庁 (cfa.go.jp)
信託協会HP
マンガでわかる結婚・子育て支援信託 | 信託協会 (shintaku-kyokai.or.jp)
雇用保険(基本手当、再就職手当)
不妊治療で特に高度生殖医療を受ける場合には、
ホルモン剤を多く使うため、めまいや腹痛など
体調がすぐれないことも多くあります。
基本手当の受給要件(※)を満たせば、
基本手当を受給することができます。
不妊治療を経て妊娠に至った場合は、
妊娠、出産、育児期間と連続して
最大4年(受給期間1年に延長期間3年)まで
延長することができます。
早めにハローワークに相談してみてください。
※原則、離職前2年間に被保険者期間が12ヶ月以上などの条件があります。
詳しくはハローワーク、
厚労省雇用保険のWebサイトをご確認くださいね。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koyouhoken/index_00003.html
他にも、企業独自の支援制度を
整備しているケースがあります。
例えば、不妊治療に使える休暇制度、休職制度、
治療費補助金制度、相談窓口設置などです。
ぜひ一度、企業の制度を再度確認してみましょう。
また、企業の人事部門や総務部門、
ダイバーシティ部門などに
お問い合わせをしてみてください。
困ったな・・・は、ココで相談
自治体が実施している
「不妊症・不育症相談事業(医療関係者、心理士への相談)」
自治体の在住、または在勤の方を対象に治療の有無に
関わらず、不妊や不育症で悩んでいる方を対象にした
オンラインやリアルでの相談を実施しています。
自治体によって在住の方のみが対象など、
相談できる条件が異なりますし、
利用するオンラインツールも異なります。
また、相談を受けるのは、医師や看護師、
生殖看護認定看護師、助産師などの
医療従事者の場合もあれば、
生殖に精通した心理の専門家、一般の心理士など
多様です。
*どんな相談ができるのか?
・今受けている治療が本当に自分にあっているのか知りたい
・不妊治療の内容をもっと細かく知りたい
・治療を進めるためのアドバイスが欲しい
・妊娠できる体づくり、健康についてアドバイスが欲しい
ぜひご自身がお住まいの、
または勤務されている自治体で、
不妊に関わる相談事業を実施しているか
一度確認してみましょう。
ピア・カウセリング
ピアとは仲間という意味です。
Fineが人材育成している不妊ピア・カウンセラーは、
カウンセラー自身も不妊を体験し、
医療情報や心理学の知識とカウンセリングのスキルを
身につけ、認定をうけた人です。
eラーニングでの学びと集合形式で行なう
スクーリング(年3回、合計6日間)、認定試験を経て、
最短でも1年かけて知識とスキルを
しっかり身につけていただきます。
2023年9月現在、認定者は173名となり、
全国にいるFine認定 不妊ピア・カウンセラーが
今まさに悩んでいる当事者の悩みや気持ちに寄り添い、
医療従事者とは違う視点でお話を伺います。
ピア・サポート人材育成は、他にも
厚生労働省のピア・サポーターや
自治体独自のピア・サポーターの
人材育成が進んでいます。
誰に、どんな話をしたいのかわからない?
同じ話を、それぞれ立場の違う人に相談しても、
その時の気持ちやこれからの思い、
希望の見え方が変わってきます。
一人で悩まず、抱え込まず、
まずは相談をしてみてください。
当事者の皆さんにはたくさんのサポーターがいます。
そして仲間がいることを忘れないでくださいね。