不妊治療と年齢の関係は、
妊孕性(にんようせい)の観点からも
大きな要因となり得ます。
しかし、不妊治療を行なっている年齢分布からみると
35歳から39歳が多く、第一子、第二子、第三子・・・
と不妊治療を経て高齢で出産となるケースが
多くなるのが現状です。
高齢での妊娠、出産について
事前に考えておくと良いことなど、
不妊治療を経た高齢出産を
私の体験も合わせて紹介します。
不妊治療における年齢との関係について
高齢出産と言われるのは何歳からかご存知ですか?
日本産婦人科学会が提唱している高齢初産は、
1993年以前は30歳以上でしたが、
現在は生活環境の改善や医療水準の向上により
大体35歳以上の初産を高齢出産と定義しています。
2人以降は40歳以上を高齢出産と定義をしています。
次に、不妊治療と年齢の関係について紹介します。
グラフ1:「体外受精と年齢による妊娠、出産、流産の割合」
グラフ1は体外受精をおこなった時の
妊娠、出産、流産の割合を示したものです。
体外受精を行なった場合でも
38歳くらいから妊娠・出産の確率が下がり、
流産率が上がっていきます。
ここから、不妊治療を行なったからといって
- 誰もが必ず妊娠、出産に至るわけではないということ
- 年齢による関係が深く関わっていること
がお分かりいただけると思います。
しかし、年齢が上がると必ずしも
妊娠・出産できないということではなく、
個々の身体の状態によって異なります。
Fineが実施したアンケート
「保険適用後の不妊治療に関するアンケート2022」
では、不妊治療をしている割合 が多い順に
- 30歳〜34歳が32%
- 35歳〜39歳は30%
- 40歳〜44歳が23%
でした。
妊娠・出産と年齢の関係があるものの
35歳から44歳で不妊治療をしている人は53%(グラフ2)と
実際には高齢での出産に至る可能性の方が
半数以上いるというのが現状です。
グラフ2:「現在不妊治療をしている人の年齢層」
高齢での妊娠、出産のリスクとは
男性でも女性でも、年齢が上がれば
様々な病気にかかりやすくなります。
その中でも、高齢での妊娠・出産は、
妊娠中や出産時にお母さん、子どもの双方に
影響が出ることがあります。
高齢での流産率の増加も
高齢出産のリスクの一つですが、
- 妊娠中に高血圧や尿タンパクなどの症状が出る
- 妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)
- その他の婦人科合併症になる可能性
も挙げられます。
また、高齢初産では、
産道や子宮口が硬くなり難産になったり、
帝王切開になる確率が高くなります。
そして、初産の年齢が高くなることで、
二人目、三人目を希望しても叶わないこともあります。
しかし、高齢妊娠・出産で
必ず問題が発生するとは限りません。
私は44歳で初めての妊娠・出産を経験しましたが、
妊娠中は過度に心配するのではなく、
食生活や適度な運動を心がけ、
妊娠合併症もありませんでした。
出産については、子宮口がなかなか広がらず
帝王切開になりましたが、
年齢の影響なのか個人の体質なのかは不明です。
高齢での妊娠・出産で事前に備えられること
国立生育医療研究センターの
母体年齢と出産のリスクについて
ポイントを抜粋します。
- 母体年齢が高いほど妊娠高血圧腎症、前置胎盤などの合併症や帝王切開分娩の頻度が高いことが確認され、その具体的なリスク上昇の度合いも明らかになりました。
- 早産や未熟児出生のリスクも同様に上昇しますがその度合いは軽度であり、死産・胎児死亡のリスクは明らかな上昇を認めませんでした。
- 母体年齢の上昇とともに増加する妊娠高血圧腎症・前置胎盤・帝王切開分娩のリスクが、妊娠方法(自然妊娠か体外受精・顕微授精妊娠か)や妊娠歴(初産か経産か)で異なることも明らかになりました。
この検証では、母体のリスクは認められましたが、
胎児への明らかなリスクは
認められなかったと言うことです。
ですから、高齢での妊娠・出産では
正しい医学的知識を持ち、
過度に心配するよりも事前にある程度の想定をし、
備えることが重要だと思います。
不妊治療を行なう場合にも言えることですが、
その先の高齢での妊娠や出産に備えて
次のようなことをお勧めします。
バランスの良い食生活と適度な運動
高齢出産に限りませんが、
特に体調の変化が激しい妊娠期においては、
普段よりもよりバランスの良い食生活を心がけ、
適度な運動が必要だと感じています。
高齢で妊娠したからと運動を控えたり
過度に神経質にならないように
心がけると良いと思います。
自分に合ったストレス発散法
妊娠期はホルモンのバランスも変化し、
自律神経が乱れることも多くあります。
不妊治療を経てようやく妊娠に至った場合には、
必要以上に心配してしまうこともあるでしょう。
私自身も長い不妊治療の末に
やっと妊娠できたという安堵感よりも
出産まで順調にいくのだろうかという
心配の方が大きかったのを覚えています。
ですから、自分に合ったストレス発散方法を
持つと良いと思います。
妊娠中のアルコールは厳禁ですが、
今はノンアルコール飲料で楽しむこともできます。
安定期を過ぎたら散歩や
バランスボール運動なども可能になります。
主治医や看護師、保健師の方と相談しながら
自分に合ったストレス発散法を持てると良いですね。
出産後に備える
出産はゴールではありません。
準備は赤ちゃんの衣服や
家庭環境を整えるだけではありません。
出産後の女性の体は、
帝王切開であれば傷の痛みがあり、
経膣分娩でも身体の痛みはあります。
出産後は5〜6日程度の入院が必要となりますが、
退院後の生活についても備えておくことが必要です。
身体と心のへの備え
産褥期(さんじょくき)という言葉をご存知ですか?
妊娠によって変化した子宮が
妊娠していないときの状態に戻るまでの
産後の期間のことです。
個人差はありますが、
一般的に6~8週間とされています。
妊娠中の子宮は、妊娠前に比べて
数十倍の大きさになると言われていることから、
元に戻るまでに相当な時間が必要なことが
想像できます。
また、
- 両親も高齢でサポートをお願いできない
- 高齢出産のため受け入れてくれる医療機関が地方にはなく里帰り出産できない
など、高齢出産ならではの
備えが必要なケースもあります。
日本でも産褥入院や産後ケア施設も増えており、
民間の産後ケアを利用する際に
行政の助成金が出るケースもあります。
自分が利用したい、利用できるケアを
調べておくと良いでしょう。
また産後の女性のホルモンはとても乱れていて
精神的にも不安定になることも多く、
身体と心の備えも考慮しておくと安心だと思います。
お金の備え
2023年9月現在、
出産費用は保険適用外でお金がかかります。
そして、育児をスタートすると
さらに様々な費用がかかります。
例えば、出産後に産褥入院するのであれば
その費用もかかります。
産後ケアを受ける場合においても費用がかかります。
そして、子どもが成長するに伴って生じる
- 保育や教育費用
- 習い事の費用
- 食費
- 住宅費など
家族が増えるとかかる費用にも変化が生じます。
子どもが独立した後の
老後の生活のための費用も考えておきたいですよね。
妊娠、出産を期に、お金についても
パートナーと思いを共有することをお勧めします。
まとめ
不妊治療を経て高齢での妊娠・出産を経験した私は、
会社生活や地域社会において様々な経験をし、
精神的な余裕と経済的な余裕もあったと感じています。
しかし、新しい家族を迎えるにあたって、
私・私たちはどんなことが心配で
どんな備えができるのか?キャリアは?など
パートナーと話す機会もたくさん持ちました。
高齢での出産が第二子、第三子の場合は、
上のお子さんの年齢にもよりますが、
家族で一緒に話し合う良い機会になると思います。
しかし、
- 妊娠や出産について心配がある
- パートナーや家族と想いの共有が難しい
場合には、
カウンセリングを受けるという手段も有効です。
不妊に関わるカウンセリングは、
自治体が実施している通話相談や面接相談があります。
Fineが実施している不妊ピア・カウンセリングでは、
不妊を経験して妊娠・出産した人の
おしゃべり会や相談ができます。
不妊を経験して妊娠中の人も相談が可能ですので、
ぜひ一度アクセスしてみてください。
不妊を経験して妊娠中、育児中の方の
グループカウンセリング
「Fineマナティークラブ」
〈参考文献〉
NPO法人Fine「保険適用後の不妊治療に関するアンケート 2022」結果
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