「仕事を続けたい。でも、子どもも欲しい。」
そんな思いを抱える女性は増えています。
2024年の共働き世帯は約1,300万世帯と、
専業主婦世帯の2.5倍※1 。
女性が働くことが当たり前になった今、
キャリアと妊活の両立は多くの人にとって
重要なテーマです。
私自身も、仕事をしながら不妊治療を経験しました。
その中で感じた葛藤や気づきをもとに、
キャリアも妊活も大切にしたい方々へ
ライフプランのヒントをお届けします。
※1 出典:内閣府の「男女共同参画白書 令和6年版」
働く女性が直面する「キャリアと妊活の両立」という課題
2023年の平均初婚年齢は夫が31.1歳、妻が29.7歳。
第1子の平均初産年齢は31.0歳と年々上昇しています。
社会進出や晩婚化の影響で、
妊活を始める年齢も遅くなり、
不妊治療を受ける人も増加傾向にあります。
「キャリアか妊活か」という
二者択一のような空気の中で、
どちらかを諦めるのではなく、
両方を大切にできる道を探したい。
そんな思いを持つ人が増えています。
キャリアと妊活の両立のリアル
妊活は女性の月経周期に合わせて行うため、
先が見通せずストレスを感じることが多くあります。
また、不妊治療を行なうとなると
通院が必要になります。
不妊治療の4つの負担
不妊治療には、大きく
経済的、身体的、精神的、時間的負担があります(NPO法人Fine提唱)。
私も、治療が進むにつれて、不妊治療と仕事の
両立から起こるスケジュール調整のストレス、
痛みや副作用だけでなく、
「うまくいかなかったらどうしよう」
「お金をかけているのに妊娠に至らない」
という焦りや罪悪感も重なり、
心身ともに多くのストレスを抱えていました。
制度はあるけれど、使いづらい
不妊治療と仕事を両立する人が増えてきたため、
政府や企業による不妊治療と仕事の両立に関する
支援体制の整備が進められていますが、
いまだに両立が難しく
離職や働き方を変える人も多いです※2。
背景には制度そのものの使いづらさや、
使うことによる当事者の罪悪感、
不妊治療に関する職場の理解不足などもあげられます。
不妊治療と仕事の両立には職場の理解と柔軟な働き方が大事~筆者の経験から~
私の職場は、不妊治療に関して理解があったため、
不妊治療を行なうことを同僚や上司に
伝えることができました。
体外受精にステップアップする際に
上司に相談した時には、
「仕事のことは何とかするから治療を受けたほうがいい」
と背中を押され、業務の共有やフレックスタイム制度を
活用して両立しました。
ただ、治療の結果、妊娠に至らなかったことを
報告することが重なると、
「協力してもらったのに申し訳ない」
と私自身が思うようになりました。
職場の理解があるからこそ、
気を遣ってしまうというジレンマもありましたが、
両立を諦めずに済んだことには
今でも心から感謝しています。
※2 Fineアンケート調査「仕事と不妊治療の両⽴に関するアンケート2023」
自分らしいライフプランを描くために

キャリアと妊活、不妊治療を両立する中で、
「両立できるの?」
「今の職場でいいのか」
「治療を優先すべき?」
といった迷いが出てくると思います。
長期的な視点で考える
5年後・10年後を見据えたライフ設計が大事です。
想定できないことも多いですが、
妊活、出産、育児、介護などのライフステージを想定し
「どのタイミングで子どもを持ちたいか」
「その間どんな働き方をしたいか」を
イメージしておくと
納得感のある選択がしやすくなります。
イメージですから、後から変更してもいいんです。
自分らしい働き方の選択においては、
ライフステージ応じた優先順位決めが大事です。
お金の備えも忘れずに
不妊治療には高額な費用がかかることも。
不妊治療の保険適用には制限があり、
年齢による回数制限もあります。
さらに日本において育児には、
子ども一人あたり約2,000万〜3,500万円
(場合によっては4,500万円以上)
の費用がかかるとされています。
キャリア設計と並行して、
経済的な備えもしておきましょう。
キャリアと妊活を両立するためのヒント

- 自分の価値観を明確にする
「今はこの選択でいい」との納得感や安心感が生まれ、気持ちの安定や自己肯定感にもつながります。
制度利用の選択にも有効です。 - 急な休みに備えての対策
両立においては、仕事の前倒しや仕事の見える化、共有化。
そして業務の属人化を避けてチームで仕事を進める工夫もポイントとなります。 - 職場とのコミュニケーションを大切にする
妊活や不妊治療について職場の上司や同僚に伝えるかどうかは悩みどころですが、伝えることで働き方の配慮してもらえるケースもあります。
伝えるタイミングや方法、誰に伝えるかなどを自分の希望や思いを考えてみると、よりスムーズに進められるかもしれません。 - 自分の体調と心の状態を最優先にする
妊活中や不妊治療中は、心身ともにアップダウンがあるもの。
無理せず、自分のペースを大切にすることが、キャリアの持続にもつながります。
治療中は不妊治療のことばかり考えがちですが、自分が好きなこと、楽しいことをする時間やリフレッシュの時間はとても大事です。
私は妊娠判定で陰性になり、治療をリセットしたタイミングで控えていたお酒や好きなコーヒーを飲んだり、日常的にも友人と美味しいものを食べたりとリフレッシュしていました。
行けるタイミングで大好きな旅行に行くこともありましたし、温泉や岩盤浴でのんびりするなど癒しの時間をつくっていました。
年齢のこともあり、のんびりはしていられないのが不妊治療ですが、疲れたら治療を一時中断し、心身を休ませることも有効です。
また始めたくなったら、治療を再開すれば良いのです。
無理はしないでください。私は、仕事でスケジュール的に難しいと考えた周期は治療を休んでいました。
一方で、今は不妊治療に重きを置きたいという時には、業務を調整してもらうことも必要かもしれません。 - 専門家や仲間に相談する
自治体の不妊治療の相談窓口やFineの不妊・ピアカウンセラー ※3、キャリアコンサルタントに相談することで気持ちが整理されたり、心が軽くなったり、自分に合った働き方のヒントを得られるかもしれません。
実際に、私はFineのメンバーになる前、悩んだ末にピアカウンセラーに相談したことがあります。
どうすればいいのかもやもやしていたのですが、話を聞いてもらっているうちに、気持ちが整理され、自然と答えが出ていました。
言語化することで見えてくることもあるのです。
また、ピアサポートグループなど、同じ立場の人とつながることで、孤独感や不安が和らぎます。
企業によっては外部カウンセリングサービスを提供している場合も。
私は不妊治療をしている友人と悩みを相談し合ったり、Fineのおしゃべり会に参加したこともありました。同じ立場の人とつながると、「私だけじゃないんだ」と安心できます。
「正解は一つじゃない」からこそ、自分軸で選ぶ
若いうちの方が妊娠率は高いというデータは
ありますが、それが自分にとっての
最適なタイミングとは限りません。
私自身は30代後半で結婚したのですが、
結婚前の35歳頃に医師から、子どもが欲しいなら
妊娠のタイミングを急ぐよう言われました。
しかし、そのころパートナーもいなかったため、
悲しい思いをしました。
今は卵子凍結という選択肢もあります。
自分の現状とライフプランを踏まえて、
納得できる選択が大切です。

ドナルド・スーパーの
「ライフキャリアレインボー」では、
人生の中で果たす複数の役割
(職業人・家庭人・学習者など)を虹のように可視化し、
ステージに応じてバランスをとることの大切さが
説かれています。
「今は妊活を優先する時期」
「今はキャリアの挑戦期」
と役割のバランスを調整することで、
納得感を持って時間を使うことができます。
キャリアも妊活も、諦めないで。
社会や企業の理解も進みつつあります。
ぜひ、相談できる場を持ちながら、
自分らしいライフプランを描いていきましょう。
キャリアは一直線に登るものではなく、
人生のステージに応じて築いていくもの、
だからこそ、一緒に人生を歩むパートナーと
ライフキャリアプランを話し合い、
自分の身体や心の声を大切にすることが
妊活との両立の土台となります。
