不妊や不育にまつわる体験は、
誰一人として同じ体験はありません。
今回は、不育症治療を経験した
男性当事者の体験談をご紹介します。
だからこそ、夫婦で一緒に検査を受けてほしい」
自然妊娠は無理、突然の宣告
私たち夫婦は男性不妊が原因で不妊治療を行いました。
結婚したのは私が34歳、妻が36歳の時で、
既に妻は高齢出産と呼ばれる年齢でした。
しかし、私は不妊治療というものを漠然としか
意識していませんでした。
妻は、今後のことを考えて一通りの不妊検査を
受けていましたが、特段問題はありませんでした。
私は自分も検査をした方がよいのではと思ったものの、
結局その時は検査を受けませんでした。
それから2年近く経っても妻に妊娠する気配がなく、
私も精液検査を受けることにしました。
その結果、私の総精子数は
たったの100万/ml(WHOの基準値は1,500万/ml以上)、
運動率も1桁で、奇形率も高く、
自然妊娠は無理と医者から宣告されました。
そのため、顕微授精を行なうことになりました。
私の妻は、卵子の量の指標として
使用されるAMHがあまり高くなく、
最初の採卵では受精卵が1個できたものの、
次の採卵では正常な卵子は0でした。
我々の年齢では、顕微授精で子どもが生まれる可能性は
10%ちょっととのこと。
これからの治療がエンドレスな展開となりそうな予感が
頭をよぎり始めました。
ただ、ただ、妻に申し訳ない
男性不妊で何よりつらいことは、自分に原因があるのに、
肉体的にも精神的にも不妊治療のつらさを
ほぼ女性が被るということです。
卵子を育てるための注射は毎日、自己注射で行いました。
そして、採卵は簡単な手術とはいえ
部分麻酔をかけて行ない、
痛みに強い妻でも「かなり痛い」と言っていました。
また、採卵の後には卵子が何個取れて
その質がどうであるか、
顕微授精した後にも受精卵のグレードがどうだったか、
といった結果が待っています。
まるで試験結果が出るようで、
結果によっては落ち込んでしまいます。
一方で、原因がある私は、精液検査を受けて、
変化がない数値に落ち込むくらいで、
それも3、4回続くと慣れてしまいました。
身体的なつらさは一切ありません。
自分に原因があるのに、苦しむのは妻ばかりです。
ただただ、妻に申し訳ない、その気持ちでいっぱいでした。
2回目の採卵で正常な卵子が取れなかったことから、
次の採卵に向けては、
しばらく期間をあけることにしました。
そして、3回目の採卵は、受精卵が3個でき、
最も質がよかった受精卵を移植し、
その後、妊娠判定が出ました。
しかし、妊娠判定が出た後も
正直、心が休まることはなかったです。
それは、40歳の流産率は40%と資料で読み、
39歳の妻もそれくらいの確率で
流産する危険性があると思うと、
安定期を迎えるまでは
流産のことが頭から離れませんでした。
安定期に入って以降もこんなに順調でいいのだろうか、
最後の最後で落とし穴が待っているのではないかと、
出産の日を迎えるまで心配で仕方なかったです。
ですが、大きな問題もなく、
無事赤ちゃんを授かることができました。
夫婦で一緒に検査を
今振り返って私たち夫婦がよかったと思えることは、
不妊治療クリニックにほぼ毎回、一緒に通った点
でしょうか。
夫婦一緒に不妊治療を行なうというのは
当然のことであると私は思っていました。
何より私たち夫婦の場合は私に原因があったので、
その点に自分がきちんと向き合うためにも、
妻の治療の状況を間近で見ていたいと思いました。
また、何が何でも子どもがほしいと
強く思わなかったこともよかったと思います。
統計上の数字を冷静に捉えて、
現状では簡単には子どもを授かれそうにないことを認識し、
お互いに追い込みすぎないことには気を付けていました。
過度のプレッシャーをお互いにかけなかったこと、
極めて日常的な精神状態で不妊治療に望めたこと、
これが私たち夫婦のがうまくいった
一番の要因なのではないかと思っています。
最後になりますが、不妊の原因が
男性にもある確率は48%(出展WHO)。
私は自分に原因があるとわかるのに
2年も費やしてしまいました。
そんなことにならないように、
子どもがほしいと思ったらすぐに
夫婦で一緒に検査を受けてほしいと思います。
【そのほか、NPO法人Fineの記事についてはこちら】
【女性体験談】高齢期不妊治療とパートナーの存在価値【NPO法人Fine】
【男性体験談】気負わない、気負わせない不妊治療【NPO法人Fine】