不妊治療と仕事を両立してみて感じたこと

女性たちの声

夫と妻のいる世帯数のうち、2023年の

共働き世帯数(※1)は1,278万世帯(前年1,262万世帯)

専業主婦世帯数(※2)は517万世帯(前年539万世帯)

となり、共働き世帯は増加傾向にあります。(※3)

 

「共働き世帯」について、妻の働き方が

「週1~34時間」が661万世帯で、

「週35時間以上」が542万世帯です。

 

さらに夫・妻の働き方別でみると、

夫「週35時間以上」・妻「週1~34時間」が535万世帯、

夫・妻とも「週35時間以上」が490万世帯

などとなっていて、今や男性も女性も同じように

仕事をしているカップル、家族が多いのが現状です。

 

しかし!不妊治療は主に女性への治療となること、

女性の生理周期に合わせて治療をすることから、

男女平等とはいかないのが現実です。

今回は、実際に不妊治療をしながら仕事をしていた

当事者2名の体験談をお届けします。

 

(※1)夫、妻ともに非農林業雇用者である世帯を共働き世帯とする
(※2)夫が非農林業雇用者で妻が非就業者(非労働力人口と失業者)である世帯を専業主婦世帯とする
(※3)総務省統計局2024年2月9日に「労働力調査(詳細集計)」の2023年平均結果

 

 

 

不妊治療をしながらの仕事。
100点を目指さなくてもいいものを見極めることで、気持ちが楽になりました。

体験者:Sさん

プロフィール

① 初診年齢 31歳
② 治療歴
第一子 タイミング法3回、顕微授精3回
第二子 顕微授精2回
③ 転院歴 なし
④ 職業 外資系製造業 営業
⑤ 職場に不妊治療のことを伝えた?
上司、同僚ともに伝えていない

 

第一子、第二子の両方の治療の際に、

卵胞の育ちが遅く、

採卵できる状態になるまで時間がかかりました。

なかなか採卵できない状況が続きましたが、

医療機関を紹介してくれた友人が

治療で子ども二人を妊娠、出産していたこと、

転院すると治療を最初から

やり直さなくてはならないことから、

転院は考えませんでした。

また、仕事が多忙だったので、

転院先を自分で調べるだけの

気力がなかったというのも事実です。

 

不妊治療と仕事の両立のために、やって良かったと思ったこと

不妊治療と仕事を両立していることは

職場には伝えていませんでした。

ですから常に仕事のやり方や成果は

同じ状態を保つように心がけていましたが、

やはり精神的、身体的な限界を感じました。

 

そのため「仕事は無理をせずに、100点を目指すのではなく、できる範囲でやる」

という発想に切り替えて乗り切りました。

 

また、営業という職種だったので

デスクワークとは違って、席にいない時間が長くても

特に問題はありませんでしたので、

お客様先に行くついでに通院することもできました。

 

結果さえ出していれば

厳しく詮索されることのない職場だったので、

不妊治療の通院もしやすかった面があります。

 

不妊治療と仕事の両立で、つらいと感じたこと

職場は男性と同じように働ける!と感じていて、

出世欲も強かったので、治療のことを職場に伝えたら

「出世を希望しない人」と思われることが嫌でした。

また子どももキャリアも望むことが

贅沢と思われることも嫌でした。

 

男性ばかりの職場で頑張ってきたのに、

その努力が水の泡になると思うと、

どうしても周囲に相談することができませんでした。

しかし、誰にも相談していないので、

当然ながら仕事の量は減りません。

通院のためにどうしても会議に遅れたり、

席したりすることがあり、

上司からは苦言を呈されたり、

信頼関係が崩れる状況も多々あり、

辛く孤独を感じることも多々ありました。

 

あの時の自分に声をかけるとしたら?

「誰かに相談しても良かったかもね」

 

頑なに相談しないと決めていましたが、

もし企業の中に、守秘義務を負った第三者機関など

相談できる場所があったとしたら、

頼りたかったなと思います。

 

制度や風土情勢も必要ですが、

当事者としての受援力も

あったら良かったなと思っています。

 

 

休職制度を利用することで、自分にとっての仕事とは何か、
今後どんな自分でいたいのか、自分自身の心とじっくり向き合えました。

体験者:Rさん

プロフィール

① 初診年齢 38歳
② 治療歴
タイミング法数回、体外受精及び顕微授精10回以上
③ 転院歴 3回
④ 職業 サービス業
⑤ 職場に不妊治療のことを伝えた?
同僚、上司に伝えた

 

不妊治療は先が見えない治療と言われていることも

知っていましたので、自分はいつまで、

どうなりたい、どこまで治療するのか、

自身の年齢のことや治療内容についても予め熟考し、

自分の心の中での覚悟を決めてスタートしました。

 

不妊治療と仕事の両立のために、やって良かったと思ったこと

仕事の特性上、通院のために仕事のスケジュールを

調整したり、有給休暇を利用しながら通院する事が

非常に困難でした。

さらに上司に相談しても、

業務の調整をしてもらえることはないだろうと思い込み

自分で抱え込んでいました。

 

治療をしながらの通院が限界だと感じ始めた時に、

「不妊治療休職制度」があることを知り、

利用する事にしました。

その際、直属の上司には、「子どもを持ちたい」という

自分自身のライフプランと

「不妊治療を本格的にスタートしたい」という

気持ちを正直に伝え、

その為にはどうすればいいのか相談しました。

自分の願いや思いを素直に打ち明けると、

上司にその想いが通じ、理解してくれました。

その後は私の気持ちに寄り添って

話し合いを進めてくれたので、

休職までの流れがとてもスムーズに進み、

安心して治療に専念できるようになりました。

 

不妊治療休職制度を利用したおかげで、

しっかりと治療や自分の気持ちに

向き合うことができましたし、夫と過ごす時間も増え、

2人で妊活や治療について、将来について話し合い、

互いの気持ちの擦り合わせができましたことは、

大きな効果でした。

 

さらに、治療内容やスケジュール、費用の事に加え、

私自身の精神的負担が非常に多くなる事を

夫にあらかじめ伝えました。

具体的には、女性が仕事をしながら治療をしてくと、

心の状態が不安定になることも多く、

心のサポートをしてほしいという話を

都度しっかり夫に伝えました。

 

夫婦それぞれが感じたこと、思ったこと、気持ちは、

素直に口に出して話すように心がけていました。

ちょっとしたニュアンス違いで生じる不安要素は、

できるだけ共有するようにしていましたので、

夫が不妊治療を自分事として

当事者意識を持ってくれたことは、

とても大きな支えとなりました。

 

 不妊治療と仕事の両立で、つらいと感じたこと

私の上司は、私の気持ちに

寄り添ってくれる人だったのですが、

周囲には理解してもらえない、

話しにくい上司もいたのも事実。

人によって寄り添い方に差がありました。

 

女性の多い職場だったので、

同僚には不妊治療している事を話しましたし、

仕事と治療の両立の大変さを

理解してくれる人が多かったように思います。

 

実際、不妊治療のことを同僚に打ち明けたところ、

同じように不妊で悩みを抱える人が

驚くほどたくさんいて、逆に色々と教えてほしいと

言われる機会が多くありました。

同じように不妊で悩んでいる同僚と

仲間意識のような絆が出来て、

お互いに情報交換したり不安を共有し合ったりと

支え合いながら治療に臨むことができました。

 

しかし、誰でもが不妊治療に共感してくれる

とは限らず、時にはキツイ言葉や配慮が無い言葉で

傷つくこともありました。

 

不妊治療への理解は、同じ女性であっても

皆が同じように受け取ってくれるものではありません。

不妊治療や不妊という言葉そのものが、

もっと自然に受け入れられるような環境にするには

まだまだ時間が必要なのだろうなと感じています。

 

あの時の自分に声をかけるとしたら?

職場の制度は、1年間の休職、1回だけ。

一時的に仕事から離れましたが、

生活の全てが妊活モードになるのが

精神的にきついと感じる事がありました。

 

また治療のために休職したのに、

妊娠できなかったらどうしよう、

もし子どもができずに仕事に復職したら・・・

という不安や怖さを感じていました。

 

妊娠、出産には至らなかったけれど、

不妊治療を通じて、夫や上司に気持ちを伝えられて、

自分の不安も焦りもある程度の納得性を持って進めた

そのやり方は、今に役立っているよと伝えたいです。

 

それぞれの思いを100%理解することは

誰でも難しいですが、

相手の気持ちや言葉を受け取ることはできると思って、

これからの人生も丁寧に歩んでいきたいと思います。

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