前号に引き続き、
妊娠中にできるセルフケアをお伝えしていきます。
妊娠中にセルフケアをしておくメリットは?
メリット①:心も身体も元気に過ごせる
マタニティライフは、
人生で数回しか経験できない貴重な時間。
せっかくなら快適に、
お腹の赤ちゃんの成長を感じながら
楽しく過ごせるといいですね。
しかし、前号でもお伝えした通り、
妊娠中のママの身体は変化が大きく、
とてもデリケートな状態になります。
切迫流産や切迫早産、
妊娠高血圧症候群などになった場合は、
内服や安静など、かかりつけの医師の指示に従って
過ごすのが基本です。
でも、それ以外のちょっとした体調不良、
いわゆるマイナートラブルは、セルフケアの実践で、
症状の軽減や改善を図ることができます。
心と身体は繋がっています。
そのため、体調が悪いなと思えば
気分も沈みがちになりますが、
体調が良ければ心も軽くなります。
日常生活の中で少しずつセルフケアを取り入れ、
心も身体も元気に過ごせるようにしましょう。
メリット②:お産に必要な体力がつく
マタニティライフを終え、いざ出産を迎える時、
とっても体力が必要になります。
陣痛開始から赤ちゃんが産まれてくるまでにかかる時間は、
初産婦さんで平均12〜15時間、
経産婦さんは平均5〜8時間。
これだけの時間を痛みに耐え、乗り切るには体力が必須。
切迫早産などでやむを得ず安静を強いられていた方からは、
『出産時に体力がすっかり落ちていて、いきむための体力が残っておらず大変だった』
なんて話も聞きます。
出産を乗り切る体力を維持するために、
妊娠中の過ごし方は重要です。
いつから始めるべき?
いつからでもOK
ご紹介するセルフケアには、
服装や食事など様々なものがあります。
ご自身の体調とも相談しながら、
出来そうなこと、やってみて心地いいことは、
妊娠初期の早い時期から始めていただいても大丈夫です。
いつからでも、出来るときに、
出来ることから始めてみましょう!
こんな時にはセルフケアを控えましょう
ここまでに紹介した妊娠期のセルフケアは、
ママ自身が気持ちよく過ごせるように
実践していただきたいもの。
なので、やってみて体調に影響を及ぼすこと、
心地よく感じられないことは
やらないという選択をしましょう。
以下の場合は、身体を動かすセルフケアは注意しましょう。
- お腹が張る時(切迫流産・切迫早産)
- つわりがひどい時
- 妊娠高血圧症候群などで安静を指示されている時
- その他、医師から注意を促されている時
おすすめしたいセルフケア6選
服装・下着の工夫と腹帯
おなかが大きくなると、
服装や下着も子宮に影響を与えるため、
それらの選び方や工夫の仕方もセルフケアのひとつです。
おなか周りには洋服や下着のゴムが
かかることが多いですが、
場所によっては子宮を締め付けることになります。
子宮を上から押さえつけないように、
ウエストのゴムを恥骨にかかる低い位置にすると
良いでしょう。
また、おなかが前に迫り出す人や腰が反りやすい人は、
腹帯でおなかを支えると楽になります。
このとき、腹帯でおへその上までしっかり締めてしまうと、
子宮が押さえられて
血液の流れが悪くなる可能性があるので、
心地よい適度な強さ、適切な位置に巻くことが大切です。
服や下着、腹帯の素材は、綿や絹といった
肌に優しい素材がお勧めです。
腹帯は、最近は妊婦帯やガードルを利用する方も
多いと思いますが、
昔は「さらし」を使うことが多かったですし、
心地良さから今も選択する方もいらっしゃいます。
お好みのものでおなかを支えてみましょう。
冷え防止
ホルモンバランスの変化や体調の変化で、
自律神経の乱れが生じやすい妊娠期は、
体温調整がしづらくなります。
また、子宮が大きくなり姿勢が変化することで、
血行が悪くなる場合もあり、
普段冷え性でない方でも身体が冷えやすくなります。
身体が冷えていると、おなかが張りやすくなり、
便秘や足のつり、むくみも起きやすくなります。
そのため、レッグウォーマーやアームウォーマーで
足首手首を温め、おなかは腹巻や腹帯で保温しましょう。
夏場でも素足にサンダルは避けて
靴下やレッグウォーマーをつけて靴を、
シャワーではなくお湯に浸かって温まることを
お勧めします。
バランスの良い食事
食事は、ママの身体のためにも
おなかの赤ちゃんの成長のためにも、
大切なセルフケアのひとつです。
特定の物を摂りすぎたりせずに、
様々な食材をバランス良く食べていきましょう。
とくにエネルギー補給において、
やはり「主食」をしっかりと摂ることが大切です。
そして「主菜」「副菜」として、タンパク質や
不足しがちなビタミン、ミネラルを摂取していきましょう。
栄養はサプリメントで摂ればいいと考える方も
いらっしゃるかもしれませんが、
サプリメントはあくまでも補助食品と考えて、
食事で不足する分を補うために利用していきましょう。
食事は心の栄養とも言われます。
ご家族で、今のことやこれからのことをお話しながら、
楽しいひと時を過ごしていきましょう。
深呼吸
深呼吸は心身のリラックスにもなり、
お勧めしたいセルフケアの一つです。
深呼吸をすると、身体の胴体部分の内側にある
インナーユニットと言われる筋肉群が動きます。
インナーユニットの仲間には、
妊娠出産に大切な骨盤周囲の筋肉も含まれます。
したがって、インナーユニットを意識した
落ち着いた深呼吸をすると、
子宮が上がり柔らかくなり、
お腹の赤ちゃんにも酸素が行き渡りやすくなります。
子宮が大きくなると横隔膜が圧迫されて
動きにくくなるため、浅い呼吸になりがちです。
深く呼吸ができるように、肋骨に手を当てて、
少しずつ肋骨が広がるように意識してみましょう。
また、お腹に手を当ててお腹が膨らむような
腹式呼吸も練習してみましょう。
上手に深呼吸ができると、
陣痛時にも緊張がほぐれて
痛みを和らげることにも役立ちます。
ウォーキング(散歩など)
妊娠しておなかが大きくなると
身体のバランスがとりにくくなります。
さらに、ホルモンの影響で
骨盤を支える靭帯が柔らかくなるため、
身体を支える力が弱くなります。
バランスを保ち、骨盤の力を維持するためにも、
適度に身体を動かして
骨盤を支える筋力をつけていくことも必要です。
様々な運動の中でも、無理せずに手軽にできるのは
ウォーキングです。
反り腰にならないように注意しながら、
足の裏(特に前方)をきちんと着くように
意識して歩きましょう。
ウォーキングは筋力のアップだけでなく、
全身の血液の流れを良くして、
リフレッシュ効果も期待できます。
簡単な骨盤体操
簡単な骨盤体操を行うと、骨盤や背骨のバランスを良くし、
腰の筋肉をほぐして、おしりや腰・背中の痛みを
和らげる効果を期待できます。
骨盤をさらしや骨盤ベルトなどで
支えてから行うと良いでしょう。
テーブルや壁に手をついて、
腰を右、左にそれぞれゆったりと回してみましょう。
大きく回す必要はなく、
小さく心地よく感じるくらいで大丈夫です。
左右差がある場合は、ラクに回せる方にたくさん回します。
その後、反対側に2-3回程度回して、
またラクな方へ多めに回すことで、
左右差が小さくなります。
どこか身体が少しでもラクになれば、
気がついたとき実践していきましょう。
骨盤を支えるなら「さらし」
妊娠すると、腰やおしりが痛くなることがあります。
この原因としては、骨盤周りの筋肉が
必要以上に緊張していることが考えられます。
そのため、適度な運動などで緊張をほぐし、
筋肉のバランスを改善していくことが必要です。
しかし、それでも身体が安定しない場合は、
骨盤をさらしや骨盤ベルトなどで支えると、
身体が楽になることがあるので、
骨盤の支え方を知っておくことをおすすめします。
お腹まわりに巻く腹帯についてご紹介しましたが、
腹帯のつけ方と違う点は、恥骨のまわりに巻くことです。
ここでは骨盤の支え方のひとつとして、
さらしの使い方を紹介します。
さらしとは
さらしとは、木綿素材の白い帯状の布です。
さらしで骨盤を支えるメリットは、
- 伸縮性がないこと
- 直接巻いても肌トラブルを起こしにくいこと
- 前から巻く、後ろから巻くのどちらにも柔軟に対応できること
があげられます。
骨盤を支えるさらしは、長さは2.5〜3mで、
幅は7-8cm以下になるように四つ折りにしましょう。
さらしの巻き方
それでは、さらしの巻き方を紹介します。
さらしの巻き方で大切なことは、巻く位置と強さです。
位置は、さらしの下の部分が足の付け根ギリギリで、
上の部分は腰骨より下になるようにしましょう。
巻く強さは、さらしが身体に食い込まず、
座っても苦しくないくらいにしましょう。
「締める」というより「支える」イメージが大切です。
巻く前よりも身体が安定して
「気持ちいい」「支えられている感がある」がある場合は、
巻いて過ごすことをおすすめします。
実際にさらしを巻くときは、下図のように、
寝ころがって巻く方法がおすすめです。
寝ころんだ姿勢だと、骨盤まわりの筋肉や靭帯の負担が
減った状態になります。
また、腰をクッションなどで上げた後で巻くと、
子宮や内臓下垂の改善もはかれます。
寝ころんで巻いた後、座ったり、立ったりしたときに
さらしがきつく感じるようであれば、
それよりもう少し緩めに巻き直すようにしましょう。
さらしの巻き方
- あおむけに寝ころび、ゆっくり深呼吸をする(膝を立ててもよい)
- できる人は、クッションなどで支えながら腰を数分間上げて過ごす
- 腰を元の高さに戻してから、さらしの中心部分を恥骨部分に合わせ、身体に沿わせて巻いていく
- さらしの端は、入れやすいところに入れ込む
- 膝を伸ばして、巻いたさらしに手が入るくらいがちょうどいい強さ
きつすぎる、緩すぎるときは巻き直しましょう。
巻く位置については、立って巻いた方が分かりやすいため、
立って巻く方法もご紹介します。
立って巻くとき
- まっすぐ立ち、さらしの中心部分を恥骨部分に合わせ、身体に沿わせる
- 無理のない範囲でおしりの筋肉を使って、おしりを小さく
小さくしたおしりにさらしを巻いて、後ろで交差させ、ピタッと巻く - さらしと身体に隙間ができないように巻いて、さらしの端を巻かれている部分に入れ込む
※さらしを立ったまま外すと、骨盤の支えが急に外れ、
子宮が下がってしまうリスクがあります。
必ず座るか寝転んでおしりを締めながら外しましょう。
また、トイレのたびに外す必要が無いように、
下着の中に巻いておきましょう。
(※説明のため、イラストでは洋服の上からさらしを巻いています)
イラストでは恥骨部分から始める巻き方で巻いていますが、
おしり側から巻くのもOKです。
心地よい巻き方を探してみましょう。
さらし以外に骨盤を支えるアイテム
さらし以外にも骨盤を支える方法のひとつに、
骨盤ベルトで支える方法があります。
骨盤ベルトは、素材、幅、巻き方など
様々なアイテムがあります。
素材については、全周ゴム製のものは、
必要以上に強く骨盤周りを締めてしまうリスクがあるため、
あまり伸縮性のない物がおすすめです。
幅が広すぎると、腰骨を圧迫し
骨盤に影響を与えてしまうため、
さらしと同様の7-8cm以下のものが適しています。
ベルトなどを選ぶ際は、上記のように伸縮性や幅に気をつけ
ご自分が気持ちよく感じられるかどうかを
大事にしましょう。
まとめ
変化が大きい妊娠期の身体は、不調に傾くことがある一方、
生活やセルフケアの仕方次第で
良い状態にも変化しやすいです。
日々の生活に、セルフケア行動を取り入れて、
ママも赤ちゃんも元気な状態で
マタニティライフを送っていきましょう。
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