国内に約16万人患者さんがいる
と言われている潰瘍性大腸炎。
特徴として、結婚や妊娠・出産を考える年代に
患者さんが多いということが挙げられます。
病気を抱えていても、安心して妊娠・出産に
臨めるような情報をお伝えしていきます。
月経への影響は?
症状が再燃し体調が悪い場合や手術直後に、
一時的に月経不順や無月経になる場合があります。
ステロイドホルモン剤を使用した治療期間中は、
ホルモンバランスが乱れやすく、
月経不順になりやすくなります。
潰瘍性大腸炎の症状が落ち着く、
ステロイドホルモン剤を中止すると、
月経は正常に戻ると言われています。
妊娠への影響は?
症状が落ち着いていない状態(活動期)では、
女性は妊娠しにくくなる可能性が指摘されています。
妊娠した際には、活動性を低下させることが
難しくなる可能性があります。
流産や早産の可能性も少しだけ高くなります。
大腸全摘術を受けると、女性不妊になる可能性が
3倍に上昇したという報告があります。
手術による卵管の癒着(※)が
原因ではないかと考えられています。
(※)手術した周囲の組織や臓器が、修復の過程でくっついてしまうこと
手術を受けたとしても、卵巣の機能が
障害されたわけではありません。
不妊治療を行うことで
妊娠は十分に可能だと言われています。
症状が落ち着いている状態では、
不妊になることは少ないとされています。
妊娠による症状の増悪も少ないと言われています!
男性への影響は?
サラゾスルファピリジン(サラゾピリン®)を
使用している場合、精子の数や運動機能が低下して、
男性不妊の原因になります。
違う薬剤に切り替えると、
2~3か月で精子の数や機能は元に戻ると言われています。
妊娠・出産の注意点は?
妊娠を計画している段階で、
主治医にその旨を伝える必要があります。
なぜなら、薬剤は安全性の高いものが多いですが、
変更が必要な場合があるからです。
妊娠すると、産科と消化器科の両方への
受診が必要となります。
両方の主治医が連絡を取り合うことができるように、
どの病院に通院しているかは伝えておきましょう。
出産方法は一般と変わりはないとされています。
しかし、手術をしている場合には、
会陰切開の際に注意が必要になったり、
帝王切開が選択されたりする可能性があります。
一般的に、ホルモンの変動が大きい
妊娠初期の3か月間と産後の3か月間に
潰瘍性大腸炎の再燃が多い
と言われているため注意が必要です。
胎児や授乳への影響は?
5-アミノサリチル酸製剤(ペンタサ®、アサコール®)
サラゾスルファピリジン(サラゾピリン®)
⇒葉酸不足の原因となることがあるので、葉酸の補充を考えますインフリキシマブ(レミケード®)、アダリムマブ(ヒュミラ®)
⇒妊娠中期から後期にかけて、母体の血中濃度を上回る濃度の薬物に胎児が暴露されることが知られています
⇒投与スケジュールに関して、主治医とよく相談してください
アザチオプリン(イムラン®)、 6-メルカプトプリン(ロイケリン®)
⇒添付文書には「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと」とあります。
⇒しかし最近、これらの薬剤を投与された妊婦さんは、投与されていない妊婦さんよりも妊娠経過は良好であったと報告されています。従って、薬剤の内服中に妊娠が分かっても、自己判断で薬を中断せず、主治医とよく相談することが必要です
最近の研究では、いずれの薬剤を使用しても、
流産・早産・胎児奇形の危険が高まることはない
という結果になっています。
その一方で、自己判断での治療中断により
病気が悪化することで、流産や早産の危険が高まる
と考えられています。
赤ちゃんへの影響がとても気になると思いますが、
授乳に関する特別な制限は必要ないと言われています。
お母さんが使用する薬剤の大半で
成分が母乳に移行しますが、
その量は非常に少ないことがわかっており、
赤ちゃんへ影響する可能性は低いのです。
主治医としっかり相談し、授乳方法も選択してくださいね!
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