脚の血管がボコボコと膨れて、
コブのようになっている人を見たことはありませんか?
40代以上の女性によく見られるので、
「うちの母や祖母にも……」と心当たりがある人も
多いのではないでしょうか。
実は、その血管のコブは、れっきとした病気です。
脚の血管がコブのように膨む病気を、
「下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)」といいます。
今回は、40代以降に深刻な静脈瘤を作らないために、
下肢静脈瘤の基礎知識から、
発症しやすい人の特徴、改善方法も併せて解説します。
下肢静脈瘤ができるメカニズム
下肢静脈瘤は脚の血管に起こる病気です。
血管には、心臓から血液を送る「動脈」、
全身から心臓に戻す「静脈」の2つがあります。
下肢静脈瘤は、静脈の病気です。
静脈には血液を逆流させないための「弁」があり、
この弁に異常が起こると血液がたまり、
コブのように膨れることがあります。
それが下肢静脈瘤です。
下肢静脈瘤は、基本的には命に関わる疾患ではなく、
重篤な状態になることは稀です。
しかし、慢性的なだるさやむくみの原因になり、
生活の質を下げる病気で、
放置すると徐々に進行していきます。
症状が悪化すると、
血栓性静脈炎や皮膚潰瘍を引き起こすことがあります。
下肢静脈瘤ができやすい人の特徴
ここからは、下肢静脈瘤ができやすい人の特徴を
4つご紹介します。
女性
下肢静脈瘤は男性よりも
女性の罹患数が多いといわれる病気です。
男性より筋肉量が少なく、血液を心臓に送り返す
ふくらはぎのポンプの力も弱いので、
下肢静脈瘤が起こりやすいといわれています。
妊娠・出産
妊娠や出産が下肢静脈瘤の原因として
挙げられる理由は、主に3つあります。
まず、子宮による圧迫です。
妊娠すると、胎児の成長とともに子宮が大きくなり、
下腹部や骨盤内の静脈が圧迫されるのです。
次に、血液量の増加です。
妊娠20週後半には、妊娠前と比べ50%も増加します。(※1)
血液量が増加すると、圧力が高まり、
血液の滞留が起こりやすくなります。
そして、黄体ホルモンの影響です。
妊娠すると血管を柔らかくする黄体ホルモンが増加し、
圧力に弱くなり、静脈弁が機能しづらくなるのです。
出産回数が多いほど下肢静脈瘤の発症や
悪化のリスクが高いともいわれています。(※2)
長時間の立ち仕事・座り仕事
長時間同じ体勢を続ける仕事は、
脚を動かす機会が少なく、
筋肉によるポンプ作業が行われず、
脚に血液がたまりやすくなります。
その結果、下肢静脈瘤のリスクが上昇するのです。
本来、ふくらはぎの筋肉が静脈を絞り上げますが、
筋肉が固まってしまいポンプ機能そのものが低下し、
静脈の弁や壁にも大きな負担がかかります。
肥満
とくに、肥満の原因である運動不足の影響が
大きいと考えられています。
運動不足は脚のふくらはぎの筋肉の
ポンプ機能の低下をもたらし、下肢静脈瘤の原因に。
また、おなかの脂肪で腹圧が上昇し、
下肢静脈や弁への負荷がかかるのも
下肢静脈瘤のリスクを上昇させるといわれています。
下肢静脈瘤の予防方法4選
ここからは、簡単に行える下肢静脈瘤の
予防方法を4つご紹介します。
かかとの上げ下げストレッチ
血流促進に重要なふくらはぎと
足首を動かすストレッチ運動です。
- 椅子の背もたれにつかまり、脚は肩幅くらいに開いて、両足のかかとを少し浮かせる。
- 3秒数えてゆっくりとかかとを上げ、下ろすときも3秒数えてゆっくり下ろす。
床につかないように浮かせた状態を保つ。 - かかとの上げ下げを20回ほど繰り返す。
立った姿勢が難しいときは、
仰向けで足首を前後左右に動かすだけでも効果的です。
加圧ストッキング
加圧ストッキングは、下肢静脈瘤の症状を和らげ、
むくみやだるさを軽減します。
また、皮膚潰瘍などの合併症予防にも役立ちます。
加圧ストッキングは市販のものではなく、
医療用の弾性ストッキングを使用しましょう。
医療用のものは圧迫する力が高く、
足首から段階的に圧迫されるようにできているので、
脚の下から上に血液を送りやすくなります。
ビタミンや食物繊維などを摂取する
下肢静脈瘤は、食事の栄養バランスに気を配ることで
予防できます。
とくに重要な栄養素をご紹介します。
- ビタミンC、ビタミンE
アボガド、トマトなど 血管の炎症を抑え、酸化ダメージを低下させる。
- 食物繊維
- ワカメ、大豆など
- 静脈圧を下げて下肢静脈瘤を予防する。
- ルチン、ビタミンB群
- ブルーベリー、イチジクなど
- 血管の拡張を防ぐ。
- アントシアニン
- イチゴ、ブドウなど
- 静脈瘤を引き起こす原因を阻害する。
下肢静脈瘤は、便秘も大敵です。
食物繊維が豊富なものを意識的に摂取し、
おなかの調子を整えましょう。
適切な体重管理
適度な運動と体重管理は、
下肢静脈瘤の発症リスクを下げます。
ウォーキングなどの運動を行えば、
ふくらはぎの筋肉の収縮を促し、血行を促進できます。
脂肪を燃焼して肥満体型にならないように
自己管理しましょう。
過度な運動や間違った歩行は
脚を痛める原因になるので、
無理のない範囲で行ってください。
下肢静脈瘤予防におすすめの漢方
下肢静脈瘤対策には、漢方薬の活用もおすすめです。
漢方薬は、植物や鉱物など、
自然由来の原料でできており、
西洋薬よりも副作用のリスクが低いといわれています。
下肢静脈瘤の原因となる静脈のうっ血は、
加齢のほか、からだの冷えや女性ホルモンの乱れにより
悪化すると考えられています。
漢方薬で下肢静脈瘤にアプローチするには、
「微小循環障害や血液のうっ滞を改善する」
「からだを温める」
「ホルモンバランスの乱れを整える」
といったはたらきを持つものを選びましょう。
漢方薬は根本からの改善を得意としているので、
下肢静脈瘤が起きにくい体質へと導いてくれます。
下肢静脈瘤対策におすすめの漢方薬をご紹介します。
下肢静脈瘤対策におすすめの漢方薬
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
比較的体力があり、のぼせやすい人に向いています。
血流の滞りをとり去り、うっ血を緩和します。
苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)
腰から脚が冷え、疲れやすい人に向いています。
からだを温め、下半身の冷えや痛みを緩和します。
漢方薬は、自分の状態や体質にうまく合っていないと、
効果を感じられないだけでなく、場合によっては副作用が生じることもあります。
また、産前産後のからだがデリケートな時期には
服用できない種類のものもあります。
そのため、「あんしん漢方」などの
オンライン漢方サービスに、
一度相談してみるのがおすすめです。
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生活習慣に気をつけて下肢静脈瘤を予防
下肢静脈瘤は女性に多い病気で、
命に関わるものではありませんが、
慢性的なだるさやむくみなどの原因になります。
ストレッチなどの適度な運動、
バランスのいい食事など、日々の習慣から気を配り、
下肢静脈瘤になりにくい生活を送りましょう。
【参考文献】
(※2)「下肢静脈瘤発症に分娩経験が与える影響の検討」伊藤 美樹子、瀬尾 奈菜枝、島田 玲子、門田 憲亮、柿木 英佑
<この記事を書いた人>
あんしん漢方薬剤師
中田 早苗(なかだ さなえ)
デトックス体質改善・腸活・膣ケアサポート薬剤師・認定運動支援薬剤師。
病院薬剤師を経て漢方薬局にて従事。
症状を根本改善するための漢方の啓発やアドバイスを行う。
健康・美容情報を発信するMedical Health -メディヘルス-youtubeチャンネルでは、お薬最適化薬剤師として「無駄な服薬はお財布と体の敵!」をモットーに薬の最適な選び方を解説する動画を公開中。
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