仕事の仲間が不妊で悩んでいるけれど、
どう接してよいのかわからない…。
これまで仲が良かったのに、妊娠がきっかけで
妊活中の同僚と関係がギクシャクしてしまった…。
そんな経験はありませんか?
自分に経験がなければ、その気持ちを分かってあげることは
とても難しいことだと思います。
とはいえ、知らず知らずのうちに大切な仲間を
傷つけてしまうことは誰だって避けたいものですよね。
どうしたら妊活中の人とそうでない人が
職場でうまくコミュニケーションをとれるのか。
また、お互いが理解し合いながら
仕事をスムーズに進めるためのコツについて
自分の体験をふまえてお伝えします。
職場で傷ついた経験や言葉
「人として最低…」と落ち込む
私たち夫婦はお互いが27歳の時に結婚し、
すぐにでも子どもが欲しかったのですが、
なかなか授かりませんでした。
当時、私はフルタイムで働いていました。
「自分は不妊かも…」と思い始めたこの頃から、
同僚や友人の妊娠報告で急に心が曇るようになりました。
当人に「おめでとう」と伝えることもでき、
妊娠周期やつわりの話題にもなんとかついていくのですが、
顔は引きつっていたと思います。
無理している自分に気づき、動揺を隠すのに必死でした。
そして、人の幸せを心から喜ぶことができないことを
「人として最低だな」と感じ、余計に落ち込みました。
「敏感過ぎる心」
この頃は不妊で悩んでいることを
周囲に伝えていなかったので、先輩に
「子どもはかわいいよ。〇〇さんは子どもまだ?」
と言われたことがありました。
その人に悪気がないことは分かっているのですが、
「子どもがいない=不幸せ」だと
勝手に感じて悲しくなりました。
いま思うと敏感過ぎますよね…。
これまでなら、なんとも思わないし、
私自身も平気で言っていた言葉が
心に突き刺さってしばらく抜けないことがありました。
不妊特有の心理について
当時は、こう思うのは私だけかも…。と、
さらに自己嫌悪に陥っていましたが、
後に、不妊当事者の多くが、
似たような体験をしていることが分かりました。
私はNPO法人Fine認定
不妊ピア・カウンセラー養成講座の中で、
不妊特有の心理について学びました。
それによると、
人は子どもを産み育てることに関して
無意識のうちに物語を持っているそうです。
この物語は自分が自分でいるための意識と
つながっているため、実現しなかった場合、
大きな戸惑いや苦しみが生じるといいます。
確かに私も当時、子どもができないだけで、
根っこが揺さぶられるようなダメージを感じ、
自分でも困惑するほど敏感になっていました。
不妊かな?と思っただけでこの状態ですから、
検査や治療が始まると負担がさらに増え、
ダメージが広がりました。
通院のため突然休まなければならないこともあり、
職場に迷惑をかけているという申し訳なさや、
「成功しなければ…」というプレッシャーも感じました。
不妊の経験がない人に知ってほしいこと
「時に悩みが深刻だと理解する」
ここまで読んでくださった方は、
「やっぱり不妊は大変そう。
どう接していいのか分からないな」
と思ったかもしれませんね。
でも、まずはそれでいいのだと思います。
一番お伝えしたいのは、個人差はあるものの、
当事者の悩みは想像以上に深刻な場合がある
ということです。
これは、1人目不妊でも2人目不妊であっても同じです。
そのことを理解し、温かく見守ってほしいです。
妊娠報告や子どもの話をしなければならない時は、
相手の気持ちに配慮しながら
伝えるべき事実のみを伝えると良いと思います。
また、不妊であることは周囲に打ち明けにくく、
職場でも秘密にしている人が多いようです。
仲間の中に、もしかしたら当事者がいるかもしれない
と想像することで声かけの言葉選びにも
配慮の気持ちが生まれると思います。
「時には程よい距離感も必要」
私は不妊治療をしていたころ、
妊娠した同僚たちと一緒にいるのがつらくて、
自分から距離を取ったことがありました。
これまで仲が良かったのに…と申し訳ない気持ちでした。
でも今では必要な距離だったと感じます。
そんな時は、「そういう時もあるよね」と、
そっとしておいてあげるのが良いと思います。
「上司として接する時の注意点」
不妊治療は通院回数が多く、治療の影響で心身の調子を
崩すケースもあり、仕事との両立で悩む人は多いです。
私も体外受精を始めてからは
半日勤務に変えてもらいました。
あなたが当事者の上司であれば、
まずは本人から治療の状況や勤務の希望を
しっかりと聞いてあげられると良いですよね。
その時は、不妊治療のことを誰にどこまで伝えて良いか
本人の気持ちを確認するなど、
プライバシーへの配慮が必要です。
また、不妊治療について予め情報を持っていると
話がスムーズに進むと思います。
但し、知っているからと言って、
求められていないアドバイスなどは
しないようにしましょう。
厚生労働省のサイトが参考になります。
チーム内に不妊治療をしている人がいると、
急きょ仕事を代わってあげるなど、
他のメンバーによるフォローが
必要になってくるかもしれません。
そういう時は、不妊も育児や介護と同じく
家庭の事情の一つととらえ、
「困った時はお互いさま」の意識を
メンバーのみんなで共有できると良いと思います。
「話を聞く時は受け入れる」
私は仲が良かった同僚に、不妊治療のつらさや
負の感情がわいてしまうことを
打ち明けたことがありました。
その時、
「そんなふうに考えてはダメだよ。前向きにならないと」
と言われ困惑しました。
私のことを思って助言してくれたことはわかっています。
でも、「前向きになれないから苦しいのに…」
と思いました。
もし仕事の仲間が不妊で悩んでいることを話してくれたら、
「そうなんだね」と事実や感情を
受け止めてあげてほしいです。
話を聞いてもらうだけで当事者にとっては救いになります。
「こう考えてみたらどうかな」
「次はきっと大丈夫だよ」といった助言や
根拠のない声かけは、
かえって傷つけてしまうことがあります。
妊活中の人へ
いま妊活をしている人にも
心に留めて欲しいことがあります。
通院などで仕事に何らかの影響が出る場合は、
できれば不妊であるという理由も
伝えられると良いですよね。
とても打ち明けにくいことですから、
まずは信頼できる上司一人にだけ
でもいいと思います。
正直に話すことで、両立に向けた何らかの道筋が
見えてくることもあります。
また周りもサポートしやすくなります。
そしてもう一つ。
私は当時、自分のことで精一杯で
できなかったことですが、
上司が話を聞いてくれたり、
仲間が仕事のフォローをしてくれた時、
その都度、感謝の気持ちをしっかりと伝えることです。
そうすることで「お互いさま」精神が
生まれやすくなると思いますよ。
最後に
いま日本では、
「2.6組中1組の夫婦が不妊の心配をしたことがある」
というデータがあります。
職場の隣の席の人がそうかもしれないという状況です。
円滑なコミュニケーションのためには、
まずは相手の気持ちを理解することが大切だと思います。
会社の休暇制度などの支援に加え、
気持ちの面でも理解が広がり、
仕事と不妊治療の両立がしやすい社会になることを
心より願っています。
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