眠りに影響するホルモンの
イメージが強いメラトニンですが、
不妊治療との関係について聞いたことはありますか?
今回はメラトニンについて説明していきます。
メラトニンとは?
メラトニンは、
脳の松果体という部分で合成されるホルモンです。
合成されるには必須アミノ酸である
トリプトファンが必要で、
セロトニンという物質を経て、メラトニンになります。
メラトニンの役割は、体内時計(サーカディアンリズム)の
調節を行うことだと言われています。
私たちの体内時計は24時間よりも少しだけ長いため、
地球の自転による24時間周期の昼夜の変化に
タイミングを合わせる必要があります。
これを調整しているのがメラトニンで、
分泌が多くなると睡眠を促進すると考えられています。
メラトニンは明るい光を浴びると分泌が少なくなるため、
日中は覚醒し、夜間は眠くなるといったリズムが
作られていると言われています。
メラトニンと抗酸化作用
最近の研究では、メラトニンには抗酸化作用があることが
明らかになってきています。
抗酸化とは、活性酸素を取り除き、
酸化の働きを抑えることです。
活性酸素は微量であれば神経伝達物質や
免疫機能の役割を担いますが、
大量に生成されると細胞を障害し、
動脈硬化・がん・老化などを引き起こす
と考えられています。
活性酸素のバランスを取っているのは、
体内で合成される抗酸化物質と、
食べものなどから得られる外因性の抗酸化物質
と言われています。
外因性の抗酸化物質ではビタミンC、ビタミンE、
カロテノイド類、カテキン類などがよく知られていますが、
体内で合成される抗酸化物質として
メラトニンも注目されています。
メラトニンと不妊治療の関係は?
スペインでは、メラトニンを内服した女性と
内服しなかった女性での
体外受精(IVF)の成功率を比較した研究がなされました。
対象者は、排卵は正常だが卵管に原因があり
IVFを受ける女性30名で、
- メラトニンを1日3㎎内服する
- メラトニンを1日6㎎内服する
- 何も内服しない
の3パターンに分けられました。
比較対象として、自分自身に原因はなく
男性不妊のためにIVFを受ける女性で、
1人以上の出産経験がある方10名が選ばれました。
研究に参加した方をまとめると以下のようになります。
- 1人以上の出産経験があり、
男性不妊でIVFを受ける方10名 - 卵管に原因がありIVFを受ける女性で、
特に内服はしない方10名 - 卵管に原因がありIVFを受ける女性で、
メラトニンを3㎎/日内服する方10名 - 卵管に原因がありIVFを受ける女性で、
メラトニンを6㎎/日内服する方10名
メラトニンの内服は40日間で、
就寝の1時間前と指定されていました。
研究結果からわかること
対象者の尿と卵子を包んでいる卵胞液のメラトニン濃度を
比較すると、濃度が高かった順に
④>③>①>②となっていたそうです。
このことから、メラトニン濃度が低い方は
生殖能力も低下している可能性が示唆されています。
卵胞液の抗酸化能力に関しては、
能力が高い順に④>①>③>②となっており、
メラトニン内服は3㎎/日よりも、
6㎎/日の方が効果がある可能性も考えられています。
IVF後の妊娠率が1番高かったのは
女性不妊ではない①ですが、
メラトニンを内服した③、④の方が、
全く内服しなかった②より高くなっていた
という結果でした。
しかし、メラトニンやビタミンCを含む
抗酸化サプリメントと不妊治療に関する研究では、
- 抗酸化サプリメントを飲んだ女性
- 偽薬(成分が入っていない偽の薬)を飲んだ女性
- 何も飲まなかった女性
の3つの群を比較すると、
妊娠率に違いはなかったと報告されています。
明らかな関連があるとは言い切れないものの、
抗酸化サプリメントを飲むことで
流産や子宮外妊娠、多胎妊娠、胃腸障害が生じていた
と報告している研究もあるようです。
これらをまとめると
しかし、適切な量や副作用が明らかになっていない
ということになるため、
自己判断での過剰な内服は控えた方がよいと考えられます。
メラトニンに関する今後の研究に注目していきたいですね!
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【参照】
e-ヘルスネット メラトニン
e-ヘルスネット 活性酵素と酸化ストレス
Javier Espino, María Macedo , Graciela Lozano , Impact of Melatonin Supplementation in Women with Unexplained Infertility Undergoing Fertility Treatment
Marian G Showell, Julie Brown, Jane Clarke Roger J Hart, Antioxidants for female subfertility