不妊当事者の団体「NPO法人Fine」様にインタビュー(前編)

弊社はこの度、特定非営利活動法人Fine

(所在:東京都江東区、理事長:松本亜樹子)と

業務提携契約を締結いたしました。
(2022年1月時点)

 

今後は「ママケリーweb」を通じて、

不妊に関する記事やコラムといった情報発信を

予定しております。

 

まずはFineがどのような団体なのかを

知っていただくために、

理事長を務める松本氏にインタビューを行いました。

 

 

「不妊に悩む声を集めて届けたい」“不妊当事者の団体”として設立

 

まずは設立の経緯について教えてください。

 

今はSNSでというのが主流かと思いますが、
昔は掲示板というものがありました。

そこには常にたくさんの方が自分の不妊に関する
悩みやネガティブな感情、ポジティブな感情が
書き込まれていました。

たとえば、
「家族に『子どもはまだか?』って
聞かれるから帰省したくない」
といった書き込みが、お盆や年末年始たくさんある
などという感じです。

それは、年中行事のように毎年この季節になったら
この話題というように続くんですね。

 

何年もその掲示板を見ているうちに、私はある日
「なぜこんなに同じ書き込みがずっとずっと続くんだろう?」
って思ったんです。

なぜなら、私たち不妊当事者が
「こういう言葉がけが辛いよね」
「こういういい方されると傷つくよね」など、
まるで社会に提言しているつもりだったのに、
どうしていつまでも世の中は変わらないんだろう?って。

 

それで、ちょっと考えた時に気が付いたんです。

「そうか。この掲示板って不妊以外の人は見ていないんだ。
だったら世の中が変わるわけないじゃない」

だったらこの声をどこかに
届けなきゃいけないんじゃないか?と思いました。

一人の声は小さくて、誰にも届かないかもしれないけど、
もし1000人とか集まったら
声を聴いてくれる人がいるかもしれない。

そうしたら何かが少しでも変わるかもしれない。

 

そんな、不妊に悩む人の声を届ける役割を行うために、
Fineを設立いたしました。

 

 

“不妊当事者の団体”としての Fineの活動と使命

 

Fine様は現在どのような活動をされているんですか?

 

Fine設立時に不妊当事者の団体として
「不妊の何が辛いのか?」
「どんなことに困っているのか?」
「どんなことをしてほしいのか?」
というアンケートを取り、
その結果をまとめたものを「Fineの使命」としています。

現在は「5つの使命と8つの活動」をもとに活動しています。

 

主な活動は、Webサイトからの情報発信、
講演会・シンポジウムの開催、公的機関などへの働きかけ、
不妊ピア・カウンセラーの養成、アンケート調査、
イベントや交流会の開催です。

現在はコロナ禍のため、
オンライン中心に行っている活動もあります。

 

たとえば、公的機関への働きかけでは、
主に署名活動や要望書の提出を行っています。

以前は国会請願も行っていました。

要望書はほとんどが厚生労働省や厚生労働大臣に
提出しておりますが、以前一回だけ
学校の、高校生の副読本に不妊治療を入れてほしいと
要望書を作成し、文部科学省に提出し認可されました。

 

活動の中でも力を入れているのが、
カウンセリング事業です。

Fineではメンタルケアをすごく大事にしています。

「ピア・カウンセラー」という同じ立場で支援をする
カウンセラーを養成する活動を行い、
現在17期に入るところです。

1年間かけてピア・カウンセリングを学び、
試験を受けて認定されたら、
今度はFineの認定不妊ピア・カウンセラーとして
活動を行っていただいています。

 

 

認定不妊ピア・カウンセラーの方はどのような場面で活躍されているんですか?

 

現在不妊ピア・カウンセラーは155名の方が
認定されています(202112月インタビュー時点)。

活躍の場は多岐にわたっていて、たとえば、
自分自身でカウンセリングルームを開設して
カウンセリングを行う人、
もともとアロマセラピストやヨガなどの
ヒーリング関係の活動をしていて、
そこに不妊ピア・カウンセリングというメニューを加えて
活動している人もいます。

なかには医療機関で活動している人や、
自治体で不妊ピア・カウンセリングを行っている人もいます。

Fineで不妊ピア・カウンセラーとして
活動している人ももちろんいて、
オンラインでの面談カウンセリングなどを行っています。

 

 

ほかにはどのような活動をしていらっしゃいますか?

 

そうですね、イベントや交流会の開催をしております。

年に1Fine祭りという大きなイベントを行っていて、
臨床エンブリオロジスト1さんと
不妊症看護認定看護師さんに、
無料個別相談を行っていただいたりしています。

 

その他には年報やメールマガジンの発行ということで、
広く活動知っていただくというようなことを行っています。

 

※1胚培養士。精液検査や精子収集、卵子収集・培養、顕微授精などを主に行う。

日本臨床エンブリオロジスト学会HP https://embryology.jp/about/clinical_embryo/

 

 

Fine様は不妊当事者の団体と伺っていますが、どのようなご経験の方がいらっしゃるのでしょうか?

 

私自身も不妊治療経験者でして、
10年くらい不妊治療をしていました。

現在は夫婦2人で暮らしています。

うちのメンバーは様々な経験をした人がいて、
不妊治療の末に子どもを授かり
現在育児をしているメンバーもいれば、
養子や里子を迎えたメンバーもいます。

また、不育症2の診断を受けたメンバーや、
自然に授かりたくて
不妊治療に踏み切れなかったメンバーもいます。

 

さらに、まだすぐに妊娠を考えていないけれど、
将来妊娠・出産できるか心配というメンバーもいます。

様々なメンバーがいることが
Fineの最大の特長だと考えています。

 

※2妊娠しても流産や死産を繰り返し、生児を得ることが出来ない病態。
女性の年齢にもよるものの、不育症の頻度は約5%と報告されている。

国立成育医療研究センターHP https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/perinatal/fuiku/

 

 

―不妊と一言にまとめても、色々な不妊体験をされた方やご家族の方がいらっしゃいますよね。

 不妊治療の辛いところは、不妊をご経験された松本様から見て、どのようなことだとお考えですか?

 

治療には様々な辛さ・苦しさがあって、
まず私の所感としては、終わりが見えないというか、
いつ自分が妊娠できるかが分からないことが
物凄く辛かったです。

 

毎回毎回、治療のたびに今度こそ妊娠しているだろう
って期待しても、その期待もむなしく
ちっとも妊娠できなかったんです。

私自身は初期の流産を2回したことがあって、
本当に天国から地獄に突き落とされる辛さを
味わいましたし、
不育症の方がよく仰るのは
「妊娠も出産もしたいんだけど、また流産してしまうかもしれないと思うと、妊娠するのも怖い。どうしたらいいのか分からない。」
ということです。

そういった辛さも不妊・不育症治療にはあります。

 

 

Fineが考える、不妊・不妊治療の辛さ

 

―ありがとうございます。

不妊や不育が一言でまとめられないのと同じように、
つらさや苦労も本当に多岐にわたるんですね。

 

本当に治療のところでは様々な辛さがあります。

私たちFineでは4つの辛さがあるとお伝えしています。

 

1つ目が精神的な辛さ。

これはこのあとお伝えする、ほかのすべての辛さに関わっていきます。

2つ目が身体的な辛さ。

治療に伴って注射をしたり、手術をして採卵したり。
そういった身体の痛みや苦しみといった「身体的な辛さ」です。

3つ目が経済的な辛さ。

不妊治療は経済的な負担が物凄く大きいです。

医学的な治療の他にも、体質改善などで
鍼や漢方、サプリメントなどを行う方もいます。

それらを全部含めると1000万円以上の金額を
使っている人も珍しくないんです。

不妊治療自体高額なのに、
今のところ自費診療ですから。

負担が物凄く大きいんです。

 

4つ目が時間的な辛さ。

不妊治療って1回の治療のために何回も通院しなきゃいけないんです。

突発的で頻回な治療・通院が必要になるため、
仕事と治療の両立が難しくなります。

経済的に負担がかかるのに仕事が難しくなる。

不妊治療と仕事の両立は
最重要課題とも言えると考えています。

不妊治療と仕事の両立が出来なくて
不妊退職をする女性が、私共のアンケートでは5人に1人、
厚生労働省の調査では4人に1人いる
というデータが出ています。

その不妊退職をした社会的な経済損失は
私どもの試算では年に1345億円に上ります。

 

この4つ辛さが同時に不妊治療の課題でもあり、
当事者の負担となっています。

 

NPO法人Fine様へのインタビューは、後編にこちら

 

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