妊娠中は虫歯や歯周病になりやすい?赤ちゃんのためにできるお口のケア

歯磨きする女性

 

妊婦さんは虫歯になりやすいとよく耳にします。

でも、吐きつわりや食べつわりでお口のケアが

思うようにいかないこともありますよね。

 

妊婦さんはどのようなお口のケアを

行ったらよいのでしょうか?

 

 

「虫歯」と「歯周病」の違いって?

 

はじめに、虫歯と歯周病は

どのように異なる病気でしょうか?

なんとなく違うような気がしますが、

詳しく…となると実は分からないことが

たくさんありますよね。

 

ここでは簡単に虫歯と歯周病を説明していきます!

 

まず虫歯は、歯の表面に付着する

プラーク(歯垢)の中の細菌が原因です。

 

この細菌が飲食物の糖分を

摂取・分解することで酸を発生させます。

歯の表面は、この酸によって

溶かされてしまいますが(脱灰)

通常であれば唾液によって修復されます(再石灰化)

 

この唾液による歯の再石灰化が間に合わず、

脱灰した状態が続くこと、これが虫歯です。

 

歯周病の原因も、虫歯と同じように

プラークの中に潜む細菌が原因です。

 

プラークの中の細菌の毒素によって、

歯茎(歯肉)に炎症が起き、

歯を支えている骨(歯槽骨)が溶けることで進行します。

 

歯周病と虫歯は、自覚症状も異なります。

一般に虫歯は初期段階でも痛みがあるため、

「もしかして虫歯かも?!」と疑いやすいのですが、

歯周病は痛みが出ないことの方が多いとされています。

 

そのため気付かないうちに進行し、

ある日突然、歯が抜け落ちるということもあるようです。

 

 

妊娠すると虫歯や歯周病になりやすい?

 

さて、虫歯と歯周病の違いは分かりましたが、

これらの歯にまつわる疾病は、

本当に妊娠すると罹患しやすいのでしょうか?

 

答えは

「正:妊娠すると歯のトラブルになりやすい!」です。

 

なぜなら、

妊娠中の「女性ホルモン」が関係しているからです。

 

妊娠中はホルモンバランスの変化や

唾液の分泌が少なくなることにより、

口腔内の環境が妊娠前と変化します。

加えて、つわりによる歯磨き不足も原因の一つです。

 

つわりがひどく、口の中に歯ブラシを入れるだけで

気分が悪くなったり、歯磨き粉のにおいや味が

受け付けなくなったりします。

加えて、妊娠初期の倦怠感や体力低下から、

歯磨きのようなちょっとした行動でさえ

辛くなることも多いです。

 

このように、妊婦さんはどうしても口腔ケアが不十分になりやすく、

そこに口腔内の環境の変化が加わることで、

虫歯や歯周病になりやすいようです。

 

 

妊娠中の虫歯・歯周病は赤ちゃんに影響する?

 

最近では、虫歯や歯周病と

全身疾患の関係性を明らかにする研究が

盛んにおこなわれるようになってきました。

 

その結果、妊婦さんが虫歯や歯周病を発症すると

早産や低体重児出産など、赤ちゃんに影響がある

ということが明らかになってきました。

 

日本国内の事例研究や報告は、

まだまだ少ない分野ではありますが、

歯周炎を発症している妊婦さんは、

お口の状態が健康な妊婦さんに比べて

約6.6倍も低体重児を出産する確率が高いこと、

 

歯周病原細菌のひとつが胎盤や臍帯に炎症を起こし、

低体重児出産を引き起こす可能性が報告されています。

 

いずれの報告も、

歯周病と出産リスクの関係がある「可能性」がある

というレベルではありますが、

赤ちゃんのことを考えると、

無視できるものではないですよね。

 

では、赤ちゃんのためにお母さんができる口腔ケアには

どのようなものがあるでしょうか?

 

 

妊娠中のお口のケアはどうしたらいい?

 

さて、お口のケアには歯磨きなど自分でできるケアと

歯石除去など歯科での専門的なケアがあります。

 

例えば、つわりがひどい場合には1日に1回でいいので

体調が悪くないタイミングを見計らって、

丁寧に歯磨きをしましょう。

 

特に睡眠中は唾液の分泌が少なくなるので、

寝る前の歯磨きはおすすめです。

どうしても歯磨きが出来ないときは、

うがいだけでも大丈夫です。

 

 

妊娠中にも歯科治療はできる?

 

もちろん妊娠中の歯科治療は可能です!

つわりもおさまって、体調が安定してくる16週以降だと

母体への負担が少ないのではないでしょうか。

 

その他の時期でも、お母さんの身体の状態や

治療内容によっては可能です。

受診する前にかかりつけの産婦人科医に

相談してくださいね。

 

さらに、受診する前に歯科医にも、

妊娠中であることや自身の健康状態、

産婦人科医の意見を伝えましょう。

 

しかし、妊娠後期になりお腹が大きくなってくると

長時間仰向けになることで具合が悪くなる場合があるので、

注意してくださいね。

(仰臥位低血圧症候群(ぎょうがいていけつしょうこうぐん)といいます。)

 

歯科治療の際のX線は、

赤ちゃんへの影響はほとんどないとされていますが、

最小限にとどめるためにも、

しっかりと担当の先生と相談しましょう。

 

妊娠中の歯科治療では、基本的に痛み止めや化膿止めなど

処方薬は内服しません。

 

しかし、歯の治療が原因のストレスなどによって

母体への悪影響が懸念されるときは、

赤ちゃんへの影響の少ない薬が

最小限処方されることもあるようです。

 

歯科では歯の治療だけでなく、

専門的な歯の磨き方も教えてもらえます!

 

赤ちゃんが生まれると育児で手がいっぱいで

歯科を受診する機会がなくなってしまうのが現状です。

安定期に入ったら歯科を受診し、

出産や育児に備えていきましょう!

 

 

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【参照】

産婦人科診療ガイドライン 産科編2020

特定非営利活動法人 日本臨床歯周病学会

厚生労働省「むし歯の特徴・原因・進行」

厚生労働省「歯周病」

坂本治美、日野出大輔、武川香織ほか, 2016, 「妊娠期の歯周状態と低体重児出産のリスクに関する観察研究」『口腔衛生会誌』66: 322-327.

片桐さやか, 2017, 「歯周病原細菌による胎児発達障害と耐糖能異常への影響」『ストレス科学研究』32: 91-92.

和泉雄一, 長谷川梢, 中島結実子ほか, 2005, 「歯周病と早期低出生体重児との関連」財団法人8020推進財団, 『歯周病と生活習慣病の関連』82-94.

日本歯科大学附属病院「妊娠前から妊娠期、授乳期のQ&A

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