はじめに
妊娠は、病気ではないと言われますが、
妊娠経過とともに大きくなるお腹、
体も心も大きく変化する妊娠中に働くのは、
簡単なことではありません。
妊娠中に仕事をする時に気をつけたいことについて
確認していきましょう。
妊娠してからの働き方
職場で気をつけること
つわりの時の対処法
疲れやだるさとともに、つわりを感じて
妊娠を自覚することもあります。
つわりは、空腹感が吐き気や
嘔吐を誘発することがあります。
朝起きてすぐに気持ち悪い方は、
朝ご飯を食べてから出勤しましょう。
また、お仕事中に少し食べられるように
小さなおにぎりを用意したり、
さっぱりして食べやすい飴などを
準備したりすることもおすすめです。
妊娠すると、今までは気にならなかったにおいが
つらくなることもあります。
職場でのにおいがつらくなる時は、
- 職場の換気をこまめにしてもらう
- 自分が心地いいと感じる精油の香りをマスクにつける
ハンカチにしみこませて持ち歩く
こともおすすめです。
つわりの感じ方は人それぞれです。
妊娠初期に症状がきついという方が多いですが、
後期になってもつわりが落ち着かず
つらい期間が長いという方もいます。
ご自身の体調に合わせ休息をとり、
無理せず病院にいって相談をすることも大切です。
立ち仕事や重労働のリスク
妊婦さんが立ち仕事をすることには、
大きな個人差があります。
しかし、妊婦さんにとって
体の負担が大きい仕事に含まれています。
妊娠する前と変わらない働き方は
思いがけず体の負担が強くなり、
- めまい
- 冷え
- むくみ
- お腹が張る
- 貧血
- 腰痛
- 膀胱炎
が生じやすくなります。
そして、切迫流産や切迫早産などの
トラブルが起こる可能性が高まります。
立ち仕事を続ける場合は、立ち仕事時間を短縮し、
1時間に10分程度は座って休憩をとれるといいでしょう。
また、足元が安定するようにヒールが低めの靴を選び、
少し疲れたなと思ったら
休憩をするようにしましょう。
重たいものを持つ仕事は、立ち仕事以上に
様々なトラブルが起こる危険性があります。
お腹が目立たない妊娠初期から無理をせず、
他の人に代わってもらいましょう。
デスクワークで気をつけること
腰痛になりやすい理由
妊娠するとリラキシンというホルモンの影響で
身体の筋肉や靱帯が柔らかくなります。
骨盤周りの靱帯や筋肉が柔らかくなることにより、
腰に負担がかかりやすくなります。
また、体型の変化により、体が重たいお腹を支えるために
姿勢が変化して腰に負担がかかります。
さらに、子宮の周囲の血管が圧迫され循環が悪くなり、
身体が冷えることでも腰痛が起こる場合があります。
腰痛になりやすい姿勢
- 椅子に浅く座り、背もたれに強くもたれかかる
仙骨座りと言われる座り方 - 首や肩が前にでて、背中が丸くなる猫背の座り方
- お腹を突き出すような姿勢の反り腰の座り方
- 足を組んで、骨盤がねじれ、
片方の坐骨に体重がかかる横座りのような座り方
- 骨盤が後ろに傾いた仙骨座り
- 骨盤が前に傾いた反り腰座り
- 骨盤を横に傾いた横座り
これらのどの姿勢も腰痛を起こしやすいです。
身体に負担の少ない姿勢
体に負担が少ないのは、骨盤を立てている姿勢です。
骨盤を立てる感覚は、
背もたれにお尻が触れるほど深く座り、
そのまま上体を起こし、
背もたれに軽く背中をそわせ、
坐骨に均等に体重をかけるとわかりやすいです。
しかし、体に負担をかけないような座り方をしていても
長時間に座っていると姿勢が崩れたり、
お尻が痛くなったりしてきます。
そこで、椅子などにバスタオルを8つ折りにしたものや
低反発のクッションなどをお尻下に敷き、
坐骨の位置を高くしてあげて
骨盤が立ちやすい状況で座ると、
疲れにくく腰痛が起こりにくいでしょう。
運転時にも同様にバスタオルやクッションを使うと
腰もお腹周りも楽になることが多いのでお勧めです。
吉田敦子・杉上貴子「新版 おなかにいるときからはじめるべびぃケア」
イラスト:ごとうゆき
同じ姿勢で仕事を続けていると
- お腹が張る
- 腰痛
の原因になることもあります。
疲れたなと感じる時は、身体を少し動かしましょう。
妊娠期を通して体が冷えると
お腹が張ったり、風邪をひきやすくなったりします。
エアコンによる冷えにも注意し、
寒暖の調節にカーディガンや膝掛け
レッグウォーマーやアームカバーなども利用しましょう。
も参考にしてください。
通勤で注意することと対処法
電車通勤の方へ
冷房の効きすぎによる影響
電車の冷房は思いの外、効き過ぎている場合があります。
妊婦さんの冷えは、お腹の張りにつながり、
赤ちゃんの成長に影響が出てくる場合があります。
冷えは足元から対処しましょう。
レッグウォーマーやレギンスを
利用するのがお勧めです。
また、腕が冷えすぎないように
カーディガンを羽織ることや
アームカバーを使うのもお勧めです。
車内の強いにおいへの対応
通勤時の電車やバスの中でのにおいが
不快に感じることもあります。
心地よい香りがするマスクを
つけることもおすすめです。
窓が開けられれば、開けてみましょう。
さっぱりする味の飴などを食べるのもいいですね。
また、通勤の時間帯をずらして、
なるべく人混みを避けてみましょう。
電車の場合は、各駅停車を選び、
気分が悪くなったときに
すぐに途中下車するといいでしょう。
そのために、時間に余裕を持って通勤してみましょう。
自転車通勤の方へ
妊娠中は、基本的に自転車に乗らないことを
お勧めします。
だんだんお腹が大きくなり、足元が見えなくなったり、
バランスがとりづらくなったり、
転倒する恐れがあります。
体を支えている骨盤にも負担が大きくかかり、
腰痛などになる場合もあります。
自転車を使えないと
交通手段に困る方もいるかもしれませんが
お腹の赤ちゃんとご自分の体のことを考えて、
他の移動手段を検討しましょう。
自動車通勤の方へ
ホルモンバランスによる眠気
妊娠初期は、ホルモンバランスの関係から
急な眠気やめまいなどの症状が出る方もいます。
個人差はありますが、妊娠初期は、
- 寝ていても眠い
- だるい
- 集中力が続かず注意力が散漫になる
傾向があります。
眠気や吐き気がある時、運転すると疲れて
その後の活動がしにくい時などは、
- 無理せず家族に送迎してもらう
- タクシーや公共の移動手段を使う
ようにしましょう。
身体的変化などによる判断や行動の遅れ
お腹が大きくなるにつれ、足元が見えにくくなり、
足も上がりづらく、乗り降りがしにくくなります。
体の痛みや違和感がある時などは、
アクセルとブレーキを踏み間違えやすく、
ハンドルの操作がしにくい場合があります。
運転が今までよりもしづらいなと思ったら、
運転を控えるようにしましょう。
特に長距離、長時間の運転は避けましょう。
また、お腹が大きくなると
シートベルトがしにくい場合があります。
お尻の下に折りたたんだタオルやクッションを入れて、
姿勢を整えて、必ずシートベルトは着用しましょう。
身体に負担の少ない働き方へ緩和しましょう
マタニティマークを活用しましょう
マタニティマークは、妊産婦さんが
交通機関等を利用する際に身につけることで
周囲に妊産婦であると認識してもらい、
妊産婦さんへの配慮を示しやすくするためマークです。
交通機関や職場、飲食店等が
呼びかけをポスターなどで掲示し、
妊産婦さんに優しい環境づくりを推進していく
目的もあります。
つまり、妊婦さんの安全性と快適さを確保するための
大切なマークです。
妊娠届の時にキーホルダーやステッカーなどを
おいている自治体もあります。
かばんにつけたり、車に貼ったりして
活用することもお勧めです。
母性健康管理指導事項連絡カードを使おう
「母性健康管理指導事項連絡カード」とは、
医師等が女性労働者への指示事項を
適切に事業主に伝達するためのツールです。
妊娠中や産後は、身体的な症状が出て、
仕事に影響がでることがあります。
仕事内容によっては、母体や胎児への影響について
不安を感じることもあるかもしれません。
そのような場合は、健診などの際に
主治医等に相談してみましょう。
主治医等から診断や指導を受けた場合、
「母性健康管理指導事項連絡カード」を利用して
事業主などに申し出をしましょう。
「母性健康管理指導事項連絡カード」は、
厚生労働省のホームページからダウンロードすることが
できますが、病院で用意されていることもあります。
体調が優れないときは、
無理せずに主治医等に相談しましょう。
まとめ
妊娠により、仕事上で周りに
「負担なのではないか」
「迷惑をかけるのではないか」
「妊娠前と同じように頑張らなければいけないものだ」
と感じて頑張りすぎてしまうことも少なくありません。
妊娠がわかり、お仕事を続けていくにあたって
一番大切にして欲しいことは、
「ママと赤ちゃんの心と体が健康に過ごすこと」です。
小さな命を宿したママの体は、
とてもとても大切な存在です。
周囲の方々のサポートを受けながら、
ご自身の体調と赤ちゃんの様子と相談しながら、
大切な妊娠期を過ごしていきましょう。
■プロフィール
認定NPO法人はっぴぃmama応援団
「ママの笑顔を応援したい!」という思いを持って、助産師・看護師などの専門職や保育士・アロマやヨガの講師・先輩ママなどと供に、親とよいこのサポートステーション『はっぴぃmamaはうす』を運営しています。
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